もの想うとき感じる繊細な色
2008年 01月 29日
『雪に立つ竹』 北原白秋
聖(きよ)らかな白い一面の雪、その雪にも
平らな幅のかげりがある。
幽(かす)かな緑とも、また、紫ともつかぬ、
なんたるつめたい明りか。
竹はその雪の面に立ち、
ひとつひとつ立つ。
まつすぐなそれらの幹、
露(あら)はな間隔の透かし画。
実にこまかな枯葉であるが、
それにも明日の芽立ちがある。
影する雲の藍ねずみにも
ああ、豆ほどの白金(プラチナ)の太陽。
かうした午後にこそ閑(しづ)けさはあれ、
光と影とのいい調和が、
湿って、さうして安らかな慰めが、
おのづからな早春の息づかひが。
聖(きよ)らかな白い一面の雪、その雪にも
平らな幅のかげりがある。
雪に立つひとつひとつの竹。
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これは白秋が39歳の時の詩集『水墨集』の中の一遍です。
雪舟や中国の山水に刺激されていたのでしょう。
情熱の詩人としての印象の強かった白秋にしては
静かな落ち着いた染みとおるような詩になっています。
雪に身を置くだけでいいという心がよく伝わってくるように思います。
聖らかな白い雪にもかすかなかげりがあって、緑とも紫かかっていると
解釈して良いでしょう。この言葉が心の奥にすっと入ってきました。
影する雲の藍ねずみという言葉にも、真っ白のはずの雪の色が
これほどにいろいろに色づいて見えることに私自身もうなずきながら
深く癒されます。
ここに光と影の世界を感じます。
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寒い日が続いています。
氷に包まれて凍えている葉もあたたかい春を待ちわびているようです。
by color-cona
| 2008-01-29 21:50
| 光と影の世界